1.29.2009

2月10日に出発。女たちがあなたの住むまちへ。

深夜というか朝方ゆえ、変なテンション。

ついに『女たち』の発売日が決まったよ〜。というか、じつは、本の場合は、CDなんかと違って、決まるのは発送日なんだよ。2月10日スタート。だから、東京都内の本屋さんなら遅くとも12日には店頭に並ぶと思う。札幌や京都や福岡に住むあなたのところには13日とかかな。苫小牧や小田原や大牟田くらいの大きさの町の書店にはそもそも入荷されるのかどうかあやしいね。それが桜井鈴茂の現状であり、またなによりも日本の現状でもあるのです(って、なんで、いきなり、ですます調なんだよ?)なので、不安な方は注文してください。注文してくれれば、稚内でも鯖江でも石垣でも書店さえあれば入ります。あとアマゾンね。アマゾンならグラスゴーでもパレルモでもモンテビデオでも配達してくれるよ(たしか、そのはず)。もちろんアマゾン以外にもネット書店はたくさんあります。あ、そうだ。物がいいぶん、値段がちょっと高いんだよ〜。1800円+税。うわっ。でも、これは出版社の決めることで、おれにはどうしようもないんだけどね。ま、一回、昼ご飯を抜くことになっちゃうかもしれないけど、我慢してくれよ。心をきっと満腹にさせるからさ。きみを別の場所に連れてゆくからさ。

それと、この間も告知した、2月28日に催される吉祥寺・百年でのトークショー、vs 石川忠司。チケットの発売が今週土曜からのようです。ぜひとも来てね。

1.24.2009

マッチョなおれ

先週の日曜は千葉・幕張でハーフマラソンを走った。滑り出しは上々。真冬用のプレイリストもばっちり。すべてがデカ過ぎて風景の変化には乏しいが、コースは広くて走りやすい。が、寒さのせいもあってスタート時にすでにうっすら感じていた尿意が12キロあたりからだんだんただならぬものに。14キロあたりでおしっこのこと以外なんにも考えられなくなる。脳も膀胱の一部であるかのような気がしてくる。おれは膀胱。膀胱はおれ。All I Need Is Pee. おしっここそすべて。15キロ手前、コース脇に公衆トイレを発見。嬉々として駆け込む。うはあ〜。気持ちE〜。たまんねえな、こりゃ。セックス、ドラッグ、アンド、ピーか。と、日常生活ではめったに体験できない驚異的な放尿のカタルシスを存分に味わったものの、いったん止めてしまった足は走り出そうにもやたらと重い。気持ちも切れてる。あ〜あ。結局、17キロ地点くらいまで歩行することに。老若男女、たくさんの人に抜かれてゆく。みんながんばる人。おれダメな人。いや〜。ほんと、みんながんばってんだよなあ。それぞれのペースで。それぞれのスタイルで。なんのために走るのだ?誰に頼まれたわけでもないのに? おれもよくわからない。が、このまま歩いてゴールするわけにはいかない、という気持ちは徐々に強くなり、やがては歩いていることのほうが苦しくなり、ちょうどきれいな女性に抜かれたのを機に、つまり、その優美な後ろ姿を当面の目当てに、再び走り出したのだった。あとは根性。ゴールは千葉マリンスタジアム。1時間57分28秒。

木曜日は若い男衆と飲んだ。というかまあ、年齢なんてたいして気にかけていないのだが、訊けば、平均おれの一回り下。みんなおれの小説を愛読してくれてる。いろいろしゃべってるうちに、ひょっとしたらこいつらがこの世界を変えてくれるのかもしれない、と思う。いや、世界じゃない、社会だ。世界、といったほうが語感もいいし、クールでもあるのだが、そういうヌルいスマートさになびいて、結局ほとんどなにも、少なくとも本質的なことはなにも、変えられなかったのが、おれたち以前の旧世代という気がしなくもない。いっそ世界なんてどうでもいいんだよ。それよりまずは社会なんだって。目の前の敵を見極めろ。……あれ?話が逸れてる? つーか、いつになく、マッチョなおれ。ま、ともあれ、彼らから精気と刺激と知識をたっぷりもらって帰ってきた。サンキューね。

1.16.2009

渾身の連作短編集がまもなく

昨日、ようやく、『女たち』がおれの手元を離れた! 今回は、ほとんどすべての過程に、つまり、例えば、デザイン上の細部の確認にまで、係わらせてもらった、というのもあるし、英訳を併録することにした(英訳については編集的な仕事もした)、ということもあるんだけど、なんだかいろいろと大変だったね〜。あとは、印刷及び製本スタッフの手を経て、刷り上がってくるのを待つばかり。書店に並ぶのは……えーと、近々にフォイルのウェブサイトでも告知があるはずだけど、2月の10日過ぎだろうか。お楽しみに。……つーか、渾身の連作短編集! 13人の女たち! 繰り返しになるけど、新たに3人を書き下ろし! 「サンドラ」は英訳も併録! すでにウェブで発表された作品もすべて推敲で20%はレヴェルアップ! ソフトカヴァーだから手に馴染むぜ! しかもフランス装(←知ってるか)だ! あ、そうだ、装画は、五木田智央氏! クール、セクシー&エキセントリック! ようするに、カッコいい! 帯に有名人のコメントとかナシ! そういう商法にそろそろおさらばしようぜ! 良いか悪いかは自分で決めろよ! Do It Yourself! Believe Your Feeling! But Don't Neglect Broadening The Intellect! すべての愛すべき女たちへ(←きみのことだよ)。すべての愛すべき男たちへ(←あんたのことさ)。一家に一冊(これ肝心)。買って(すごく肝心)読んでくれ。あ!ヴァレンタインのプレゼントにもいいんじゃないか! なんか素敵じゃん? チョコは不二家のハート型のやつでじゅうぶん(美味いしな)。よろしく。

さて、で、公式発表はまだのようだが、「女たち」の刊行を記念して……いや、必ずしもそういうわけではないのだけど、2月28日(土曜)の夜に、吉祥寺のセレクト・ブックショップ「百年」で、再び石川忠司氏と対談やります。昨年末の朝日カルチャーセンターの時とは趣をじゃっかん変えて(というか、場所柄おのずとそうなるのだけど)、ルーズに、ホットに、スポンテイニアスに。入場料も安いし(たしか1ドリンク付で1000円)、ライヴに行くような感覚で、あるいは飲みに行くような感覚で、来てね。詳細はあらためて。

1.06.2009

迎春とPARISとFALLと

あけましておめでとうございます。本年もお付き合いください。

年末年始はふいに思い立ってギリシャのクレタ島に……行けるわけはなく(そういうことしてみたいな)、例年になく地味な正月を過ごしたように思う。ただの連休というかんじ。

渋谷ル・シネマでセドリック・クラピッシュ監督「PARIS」を観た。日々の生活に追われている社会福祉士のシングルマザー(恋人も希望の類いもナシ)という地味な(というか、まあ、そこらへんにいそうな普通の)役を演じたジュリエット・ビノシュが素晴らしかった。ずいぶん前の映画だけど「存在の耐えられない軽さ」のテレザ役もそうだったし、「汚れた血」のアンナ役もヒロインのわりにはそうだったけど、この人は地味な/野暮ったい/疲弊した役をやらせると最高だな。生活に埋もれていないと滲み出ない女の色気、あるいは色気の残滓みたいなものが彼女の演技からは匂い立ってくる(そういえば、かつては、好きな女優を訊かれたらジュリエット・ビノシュと答えていたのだった)。映画自体はとても良いシーンといささか興醒めなシーンとが相殺して、結局、並みの出来になってしまっているように思った。あと、驚くべきことに、予告編ではキーンKeaneのセンチメンタルすぎる曲が映像を覆い尽くすような音量で流れていて、かなり警戒していたのだが、本編ではどこにも使われていなかった。ん? いや、もちろん、おれとしてはそれで正解だと思ったし安堵もしたのだけど、他方では構えていたぶん拍子抜けもしており、終演後にさっそく係の人に尋ねたら、「あれは日本だけのイメージソングです」ということだった。おいおい。そんなのアリかよ。ま、ようするに、あのくらい感傷的なムードで宣伝しないと日本では客を集められないという配給側の判断なんだろうけど。やばいね。やばいよ。こうして、わたしたちは文化の下り坂を転げ落ちてゆくのだ、たぶん。安直なローカリズムの信奉者はこれに異を唱えるのだろうけど。

元旦の夜遅くに、なんの気なしにレコードに針を落としたフォール/The Fall に、再び、魂をもっていかれた。以来、ハマっている。他のを聴く気がしないほど、ハマっている。じっさい、ここ数日はフォール以外の音楽をほとんど聴いていない。食事の時にも大音量でかけてワイフに煙たがられている。で、現在所有していない(というのは、何枚かはこんなにハマるとは知らずに20代の頃に引越だとか家賃を払うためだとかの理由で売ってしまったのだ)彼らのCDやLPを揃えていこうと思ったのだが、ちゃんと調べてみると、彼らのアルバムは、オリジナル盤だけで27枚、コンピ盤やライブ盤を合わせると100枚(!)にもなるようで、いきなり眩暈。膝が落ちるぜ。誰か金くれよ。それにしても、The Fallのイギリスやアメリカでの根強い人気や評価や影響と日本でのそれらとの甚大な差っていったいどういうことなのだろう。もちろん、彼らの最大の魅力のひとつが、マーク・E・スミスの辛辣にして難解な(…らしい)歌詞にあるということは明白なのだけど、おれは歌詞なんてほとんどわからずにハマってるぜ? やばいのはこのおれなのか? ……かもしれん。まあいいけど。ちなみに、おれは96年にハシエンダ@マンチェスターで、彼らのライヴを体験している。今となってはなかなかの自慢である。ヘヘへ。