4.15.2009

入ってきてよ、ぼくらの社会に。



もう四月も半ばじゃん。参ったな。どうなってんだ、このスピード。

ハーフマラソンについては今日も書かないでしょう。いつかは書くでしょう。いつになるでしょう。

先日、軽いドライヴ帰りに我が家から田園都市線の駅でいうと三つほど奥になる市ケ尾駅前の……なんて言ってもこのへんに住んでる人しかピンとこないか、えーとね、住所でいうと、横浜市青葉区になるのかな、渋谷から三十分強の郊外住宅地の……西友に晩ご飯の買い物をするべく寄ったんだけど、店に足を踏み入れた途端に普段使っているスーパーマーケットとは異なるムードを感知した。そのわけは、店内が妙に静かだったからで、いいなぁこのかんじ、と思ってさらに耳を澄ませると、なんとBGMとしてジェーン・バーキンが流れていた! うひぁ、郊外の西友でジェーン・バーキン? しかも、ちょっと耳を澄まさないと聞こえないくらいの音量で。

いいよねえ。こうであってほしいよねえ。

いやまあ、ジェーン・バーキンはこの際どうでもよくてさ、スーパーのような不特定多数の人間が出入りする半ばパブリックな場では、音楽が流れているにしても、耳に邪魔にならない音量で流れていてほしい。おれはほんとうにこの手の問題に日々悩まされているのだよ。普段出入りする近所のスーパーやコンビニの多くでは、騒音としか思えないような音量で、店内放送が流れている。しかも、それがまだモーツァルトやブライアン・イーノだったら許してもいいけど、君の笑顔が見たくてだのあなたがくれた夢だのありがとう愛だの、といった白痴的な歌詞と黴臭いメロディーの歌謡曲が。
 
気が狂いそうである。繰り返すけど、音楽の趣味はまあ人それぞれだからよしとしよう、おれが歪んでるのかもしれないしさ、問題はあの音量よ。ライブハウスとかCDショップとかお気に入りの古着屋とかじゃないんだからな! 単にタマネギとかさんまの開きとかヨーグルトとか発泡酒とかを買いに来ているのであって、歌謡曲を聴きに来ているのではない! 無理やり聞かせるな! 音だって一種の暴力だぞ! おまけに、この際だから名前出しちゃうけど、東急ストアの鷺沼店には、売り場の要所要所にラジカセや小さなモニターが置かれていて、自動音声でなんだかんだとかまびすしく商品のアピールをしてるの。それらが互いに相殺して結局、何を言ってんだがほとんど聴き取れない。もう音の地獄だね。この間は、ついに我慢できなくなって、「お客様の声をこちらへ」などと記されてるボックスに、そのことを書きつけて投函した。翌日、売り場担当マネージャーとかいう人から電話が来て、「放送をやめるわけにはいきませんが、音量については善処します」みたいなことを言われたけど、どうなってんだか。まあ、たった一つの意見で、大きく変わるということはないだろうな。

で、西友。調べてみると、西友はいまや世界最大のスーパーマーケット・チェーンであるアメリカ・ウォルマートの子会社なんだね。最高経営責任者もエドワード・ジェームズ・カレジェッスキーさんとかいう外国人。ふむふむ。このこととBGMの音量および選曲は関係ないのかな。関係あるだろうな。関係あるとおれはみたね。……ならば。もし、西友(少なくとも市ケ尾の西友)のように店内が静かになり、白痴的な歌謡曲の代わりに、ジェーン・バーキンが流れるんだったら、あ、それはいいんだった、えーと、そんな贅沢は言わないぜ、いっそミスチルでもいいから小さな音量でかけてくれるんだったら、他のスーパーマーケットやコンビニエンスストアも、どんどん外国の企業に買収されてほしいよ。

で、さらに、思い出したんだけど、欧米のスーパーマーケットって、静かなだけじゃなくて(というか、たいていはなんにも流れていない)、レジの人が椅子に座って働いてるよなあ、まるで自分のデスクに向かうみたいに。ぜんぶがそのスタイルなのかどうかは知らないけど、記憶にある限りそうだ。さすがに西友はレジの人、立ってたけど、けれども、あの、ニッコリ笑顔+「いらっしゃいませ〜こんにちは〜……198円が1点……合計で3685円頂戴いたします……四千円お預かりいたします……ありがとうございました〜またおこしくださいませ〜」+一礼+ニッコリ笑顔、というような、過剰に詳細で慇懃な、消費者は神様です的な、接客ではなかったことはたしか。もっとシンプルで実際的だった。……あれねえ、働いたことある人はわかるはずだけど、すんごく大変なんですよ。ああいう接客をさせられることで、少なくとも倍のエネルギーは使うね。しかもなんのためなんだかわからないエネルギー。……などと考えていくと、グローバリゼーションってのは労働者にとって良いことも多いんじゃないかな。と、たった今思いついたように書いたけど、ぼくはじつは長いことそのように思っています。カモン、アメリカ。カモン、フランス。カモン、世界。

ちなみに、自動音声による騒音等については、中島義道の「うるさい日本の私」(新潮文庫)や「醜い日本の私」(新潮選書)に、詳しく、かつ面白く、書かれています。興味のある方と、小生のように公共騒音に発狂しそうになっている方はぜひこちらを。

今日は珍しく改行、および行間空けを実行してみました。どうかな?

あ、写真はまたしても本文と無関係。地下鉄の中で。ミラノの女たち。いつまでこのネタを使うのだ?