2.27.2009

六十六歳のおばあさんはリンダが好きだという

 まあ、当然ながら毎日いろいろなことがあるわけだけど、ここに記せないまま日々が過ぎてゆく。簡潔にさらっと書けないのは、おれの性分でもある。しかし、今日はそんなおれの性分をねじ曲げて、できるだけさらっと書きたい(と、いつも思っているような気がするが)。

先週のことになるが、ほんとうに久々に、曽我部恵一バンドのライヴを代官山UNITで見させてもらった。そして、ほんとうに久々に、”青春”真っ直中な気分を味わわせてもらった。そういうのが、ちゃんとおれの中にも残っているのである。でね、途中で、横や後ろのお客さんをちら見したら、みんなすっげえハッピーな顔してるんだよなあ。その言いようのない美しさに、思わずウルっときちゃったぜ。ロックンロールってすごいよ。マジで。

おふくろとこれまた久々に電話でしゃべったら、『女たち』を読んだという。どれが良かった?と訊いたら、「リンダ」が好きだという。これには少なからず驚いた。だっておふくろはブコウスキーなんてまったく(神に誓って!絶対に!)知らないわけだし。ふだんはせいぜい山崎豊子とか三浦綾子とかを読んでるんじゃなかったっけ? 少なくとも、ど田舎で生まれ育って今もど田舎で暮らす、土いじりと二匹の犬が好きな六十六歳(たしか)のおばさん……いや、おばあちゃんよ? でね、一方で、とても親しくさせてもらっている、三十歳(たしか)の、アーバンな育ちで今もアーバンで暮らす、おれが聞いたこともないようなフランスの作家の名前を(酔ってるくせに)がんがん出してきたり、「あ、それについて、ニーチェはこんなふうに言ってますね」とか(酔ってるくせに)語ったりする、まあ言ってみれば、文芸エリートの編集者も「リンダ」を褒めてくれた。これはなかなかに感慨深いのである。おれの三十倍はインテリジェントな編集者とおれの三十分の一くらいしかインテリジェントでないおふくろ(……まあ、読んでないだろうけど、おふくろ、ごめん! これも、レトリックってやつさ)が、同じ「リンダ」を好んでくれる、というのはね。

夕方、「remix」が届いた。ブック・レヴューで桑田晋吾氏が『女たち』と「桜井鈴茂」について、素敵な評を書いてくれている。うれしい。とくに、今さらながら、『アレルヤ』に触れてくれているのが、うれしい。桑田氏曰く「これは下北沢版の『トレインスポッティング』だ」と。……しびれるぜ。あの小説は刊行当時、僅かの例外を除き文芸業界にもその他の業界にもほとんど相手にされなかったので(装丁がひどいせいもたしかにあると思うが)、あえて自賛させてもらうけど(そのくらいの道理はあるだろ、ベイベー)、いいよ〜。……いいよ〜、って説得力ないかw。しかし、絶版。どなたか、装丁新たに再発(復刊)してくれませんか。「埋もれていたゼロ年代最高の青春小説、ここに復刊!」みたいな帯つけて。というか、あれにはもともと曽我部恵一がワンダフルな帯を書いてくれてたんだよな〜。ソカバン・ファンのロックンロール・キッズよ、ぜひとも。  

と話がなにげに戻ったところで、今日はおしまい。ぜ〜んぜん、簡潔じゃないけど。ルーズなだけで。そういえば、最近、おれ、宣伝ばかりしてるな。まあ、いいか。つーか、宣伝でやってんだしな。とか、身も蓋もないことを。

では、土曜日、百年で会おう。中川・元財務大臣の真似をしないよう、気をつけます。

2.16.2009

百年で

久しぶりになっちゃったな。

さてさて、『女たち』は無事みなさんの住む街に届いてますか。さきほど旧友から「値段が高いぞ」みたいなメールが来てて、そういうこと言われると心が痛むんですけど、まあこればっかりはおれにもどうしようもないことなんでね、勘弁してください。

そういうことを含めて、話しましょう、百年で。小説の値段とか未来とか意味とか位置とか倫理とか。まだ受付中らしいので、都合がつく方はぜひとも。


数日前、ダルデンヌ兄弟監督の「ロルナの祈り」を観た。いろいろと書きたいんだけど、時間がないので一言。……素晴らしい! ほんとに素晴らしい! おれの中では、この作品をもってして、ついにダルデンヌ兄弟は現代最高の映画作家の一人(というか兄弟だから二人なんだけど)になったね。

昨日は友人夫婦の家で、音楽の映像を見まくった。ミュージック・ヴィデオやグラストンベリー・フェスの映像や。我が家ではこういうのをあまり観ることがないので、すごく楽しかった。とりわけ、Faithlessのグラストンベリーが最高だった。

取り急ぎ。ってまるでメールみたいだけど。まあ、メールみたいなものか。