12.27.2008

クリスマスの夜にアナーキー、その他短篇

書くことはいっぱい。でも時間はわずか。何から書こうか……箇条書きで。

1、20日の石川忠司氏との対談に来てくれたみなさん、ありがとうございました。人前できちんと話すのって難しいなってのと、でも人前に出るのってそんなに嫌いじゃないなってのと、しかしながらたとえ有名人になっても生放送のテレビに出るのだけは絶対やめようっていう堅い決心と。それから、ぼくら日本人って前提として共有してる知識とかユーモアの感覚とかってすごく少ないんだな、というのも改めて実感。打ち上げは楽しかった。この秋に知り合って一気にマブダチになった黒田晶や、じっくり話すのは二回目の神山修一さんや、久しぶりに会った編集者Oさんや、しょっちゅう会ってる編集者Sくんや、純粋に1ファンとして来てくれたKくんや。

2、我が人生におけるもっとも軽んじたクリスマスとなった。軽んじた、どころか、まったく何もしていない。どうもそんな気になれなったからなのだが、これは決していいことではないと思う。本当はクリスマスくらい神聖かつあたたかな気持ちになりたいものだ。キリストさん、ごめんね。

3、そんな、ぜんぜんクリスマスじゃないクリスマスだったわけだが、曽我部恵一からはとても素敵なクリスマスプレゼントのCDが届いた。トラキャンやヴェルヴェッツやミスフィッツやギャラクシー500やピクシーズやビートルズやの曲をアコギで弾き語ったカヴァー・アルバムなんだけど、ほんともう素晴らしくて、現在我が家のヘヴィーローテーション。でも、これ、非売品だそうで……なんかオレ、自慢してるみたいじゃん。曽我部くん、これほんとに売らないの? コピーライトの問題とかあるのかな? ……まあ少なくとも、下北沢CityCountryCityでリクエストすればかけてくれるはず。 

4、ゆうべ、渋谷のシアターNで『アナーキー』を観た。アナーキー、というのは、ラッパーのAnarchyではなく、日本のパンクバンドの元祖、亜無亜危異、のことです。クリスマスの夜にたった一人で観る映画(もしくは聴く音楽)とはとうてい思えないが、しびれたね。泣きそうになったね。吠えそうになったね。刮目すべきシーンばかりなのだけど、とくに、デビューしてまもない頃のインタビューで、彼らが……とりわけマリこと逸見泰成が、は?サウンド? おれらには歌詞しか重要じゃねえから…みたいなことを言っていて、思わず吹き出すとともにわーおって叫びたくなるほど興奮した。これがなんとギタリストのセリフだぜ。きっとマリはロックをこそやっているのであって音楽をやってるつもりはないんだよね。最高だ。ほんと最高。最高のパンクス。

5、タバコをやめた。再び、やめた。いつのまに吸ってたんだよおまえ、ってかんじだけど、タバコはやめる時だけ宣言するものである。

6、お待たせしている「女たち」の単行本、発売は2月10日前後になるものと思われます。……が、この期に及んで、引用しているスミスの歌詞のコピーライト問題が浮上し、いささか落ち着かないおれ。まあ、大丈夫だとは思うけど。つーか、大丈夫じゃなきゃ困るよ! 神さまとモリシー&マーへの祈りを込めて、つーか早い話、願掛けで、今さら買う必要などまるっきりないと思っていた先月発売されたばかりのスミスのベスト盤「the sound of the smiths」を急遽購入。これがね! 全曲リマスタリングらしく、なんか音がやたらいいぞ。気のせい? しかも、Disc2には、これまでは7インチのアナログやブートレグでしか聴けなかった名曲「ジーン」とか、「ハンサム・デヴィル」の83年ハシエンダ@マンチェスターでのライヴ音源とかが入っていて、棚から牡丹餅、うれしいことこの上ない。これは買いだよ!新保くん。実名出して悪いが、マジで! ……あ、もう買ってる? ……スミスのオリジナル・アルバムをぜんぶ持ってる人もスミスまったく未体験の人も年末年始はぜひこれを聴きつつ、歌詞の引用許可がすんなり出ることを、お祈りください。

では。まだ書くかもしれないけど、ひとまず……今年もありがとう。良いお年を。来年もよろしくね。

12.09.2008

死んだことが悪魔にバレる前に

驚異の更新ペースは続いています。落書きしちゃえ、みたいな気分。

先週末、たぶん『TOKYO!』以来の映画館に行って、シドニー・ルメット監督『その土曜日、7時58分』を観た(原題は"Before The Devil Knows You're Dead")。プログラムにあった監督のインタビューも照らし合わせて一言で説明するなら、犯罪系あるいは転落系メロドラマ、ということになると思うんだけど、メロドラマ、という言葉から普通イメージするものよりは作りが凝っているし、最近だと『カポーティ』でカポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンをはじめとする俳優陣の演技はさすが、というか秀逸で、着席した時にはうっすらと感じていた尿意を完璧に忘れさせる、あっという間の1時間57分だった。

ところで、ここ2、3年は予告篇でわくわくすることがめっきり少なくなっていたのだが、この日は「お!」というものが何本かあり、この冬は何度か映画館に足を運ぶことになりそうだ。さっそく前売りチケットも買った。

そうそう、何度か白状してるように、おれは家で映画を観るのが不得手だ。そのことをこれまではけっこう後ろめたく思っていて、克服しようとネット宅配レンタルサービスの会員になってみたりもしたのだが、この三か月間、月会費にして六千円弱も払って、借りたのはたったの4枚、観たのは2.5本、という体たらく(まあ、時期も悪かったのだけどね)。というわけで、あきらめた。で、高らかに宣言。わたしは家で映画を観るのが苦手な人間です。家では、本と音楽と猫でおおむねじゅうぶんなのです。ついでに、我が人生においても、必要か不必要かと問われれば必要ですけど、しかしながら本や音楽や猫ほどには映画は必要ではないようです。……あ、「猫」のところは、半ば真実、半ば暗喩ですが。

とか書くと、映画の仕事が来なくなるかな。やべ。

12.05.2008

the sworn group

史上初(たぶん)の二日連続更新! おれは狂ったのか。

ゆうべは大学以来のマブダチであるキリンジの元マネに誘われて南青山のライヴハウスに行った。目当てのバンドはthe sworn group. 事前に音を聴かせてもらっていたのだけど、その印象に違わず、とても素敵なバンドだった。穏やかにして力強いグルーヴとビタースウィートなリリシズムをたたえた歌とギター。……などと簡単に言ってしまうのが憚られるほどに魅力的なサウンドと歌だった。聴いてるうちに自然と心が浄化され、しかも背筋がしゃんと伸びていくような。すっごく久々だね、こんな瑞々しい気持ちになったのは。既存のバンドに喩えられるのはやってる本人たちの望むところではないと思うけど、あえて言おう。彼らは日本のthe trash can sinatrasだと。

今朝も彼らの曲を繰り返し聞いている。空は美しく曇っているし、おれは時空から落ちこぼれて、いつになくハッピーだ。

 

12.04.2008

世界を肯定するのはジジイになってからでいい

驚異のペースでの更新! でしょ。やればできるんだって。

ゆうべは石川忠司と20日の朝日カルチャーセンター新宿での対論について打ち合わた。酔いがまわってくるにつれて、打ち合わせの色は薄まり、ただの飲みに移行していったが、いずれにしろ刺激に満ちた話だった。過去に二度やらせてもらった、吉祥寺・百年でのトークショーとは少々趣が違って、場所柄、アカデミックな側面がより幅を利かすことになるだろうし、「受講料」もちょっと高いのだけど、小説・文学好きな人にはぜひ来てもらいたい。詳細と申し込みはこちら

池袋駅で別れる時に、「桜井、家どこだっけ?」って訊くから、「たまプラ。ファッキン・コンサヴァティヴな町。うんざりだね」って答えたら、石川さんが「ヤンキーの町だってうんざりだぜ」って言ってニヤっと笑い、三郷に帰っていったのが、妙に可笑しかったな。なんというか、説明のつかない変な話だけど、住んでる場所に対する居心地の悪さを今は大切にしたいと思う。この社会/世界の圧倒的な歪さを失念してしまわぬためにも。