12.04.2009

ダイナミズムとはロマンチシズムが

あれあれ、気がつけば、師走に入ってる。早すぎるっての。参るね。

とくに書くこともないんですわ。失意にひしがれている毎日です。などと書いても、冗談に聞こえるみたいなんですけどね、冗談じゃないです。←右の写真とかが良くないんですかね? しかし、わざわざサッドフェイスの写真を撮るのもねぇ。

何日か前のこと、すでに契約は切れたはずなのに、なお律儀に配達される読賣新聞を読んでいると、国際面にウルグアイの大統領選挙のニュースが載っておりました。中道左派与党「拡大戦線党」のホセ・ムヒカ氏(74)が当選を確実にした、と。「優しい風貌の元ゲリラ」と題された写真付きの囲み記事によると、この方、「かつては強盗や誘拐に手を染めた元左翼ゲリラ」だそうで。要約するの面倒なので、というか、記事がすでに要約なので、そのまま転載します。「首都モンテビデオ出身。小学3年で父を亡くし、貧困の中で育った。家畜の世話や花売りなどで家計を助け、20代で労働運動にかかわり、やがてゲリラ活動に身を投じた。1972年に検挙され、軍事政権が終わる85年まで収監された。出所後は元ゲリラ仲間と政治団体を作り、95年に初当選。2005年にはバスケス大統領率いるウルグアイ初の左派政権で、農牧水産相に就任した。……(中略)飾らない性格で、貧困層や工場労働者の支持は高い。愛称は「ペペ」。05年、ゲリラ時代に知り合ったルシア・ポランスキー上院議員と結婚。愛読書はセルバンテスの小説「ドン・キホーテ」という。」……いやあ、なんかわくわくしませんか? 希望があるでしょ? こういう人が大統領になれちゃうダイナミックな世の中って。それに比べて、我が国というのは、ほんと閉塞的な社会だよねえ。端っから首相になりそうな出自のやつがまんまと首相になってしまうという。いや、ぼくは今のところハトヤマさんをわりと支持してはいるんですけどね、そういう個人的な思いはひとまず置いといてさ、そんなのばっかりでしょ、日本の首相って。少なくともここんところは。そりゃヤギの世話やマッチ売りを経験していればいいってもんでもないけどね、逼迫した理由による万引きを経験したことのないボンボン野郎に……いや、まあいいんだけどさ、つまらん感じがするのよ。閉塞感ってのはこういうところにも根があるのだと思う。せめて、例えば、ノリピーが前原大臣(歳も近いし)と電撃結婚してさ、そんでもってノリピ―のあげまんに乗って前原さんが首相就任とか、そういうこと起きないかな。……この世にもっとダイナミズムを! 

なんて思いで、新聞をさらにめくっていくと、今度は村上春樹氏が『1Q84』で第63回毎日出版文化賞を受賞というニュースに行き当たるわけ。……ああ。つまらん。あんなに売れた、あんなに話題になった本に、しかもとっくに権威を確立した作家に、今になってこんな賞をわざわざ授与する必要はあんのかな。ほんとに、つまらん。こういう、なんていうの? 無難な、事なかれ主義的な、日和見主義的な、その結果、強きを助け弱きを挫くことにもなる臆病なノリというか態度が、ニッポン国には蔓延してるように思うんだけど。もっとカウンターな意識とか気概はないわけ? ほんとイヤになっちゃうよ、去勢された羊みたいなのばっかりで。……あれ? マズいこと口走ったかな。かもな。まあ、いいよ。

で、話し戻るけど、最初のニュース、ウルグアイのね、わくわくするほかにも、なんでか妙にロマンチシズムとでもいうべきものを感じていて、最初は自分でもなんでかわからなかったんだけどさ、数時間後にハッとなった。ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短篇に、ウルグアイの左翼の大人物が出てくるのがあって、それがこの現実のニュースの土壌に雨水のように浸透してたんだよね。というわけで、本棚の奥から探し出して再読しました。『砂の本』に入ってる「会議」ってやつ。タイトルは素っ気ないけど、いや、内容もある意味、素っ気ないんだけど、それでも甘美で、切なくて、麗しくて、ああもう、たまらんよ。

ダイナミズムとはロマンチシズムが支えているのである。
……なんて言ってみたくなりました。

いうまでもなく、ロマンチシズムとは、この世を水浸しにしている、あの安い感傷のこと、ではない。

では、良いお年を!……あ、それは早いか。もう一度くらいはね。